会長メッセージ

平成29年9月19日
熊本学園大学教授 佐藤 信彦

 第33回全国大会での役員改選に伴う新理事会において、第11代会長に選出されました。これまで歴代会長が築きあげてきた33年に及ぶ伝統を礎に、会長として任期3年間を全うしたいと考えております。

他の多くの学会と同様に、日本簿記学会も様々な課題を抱えています。それには学会誌の位置付けや学会財政の逼迫(単年度赤字予算)、会員数の減少、長年後援してきた全国経理教育協会の簿記能力検定試験の後援・評価体制、日本学術会議協力学術研究団体への登録申請などがあります。この中には、すでに、中野常男前会長のリーダーシップにより解決への道筋が示されたものも多くあります。例えを一つだけ挙げると、学会誌は、それまで、『日本簿記学会年報』という一つの媒体で多くの役割を担ってきていましたが、その役割ごとに、査読誌としての『簿記研究』と査読になじまない論文を収録する『簿記フォーラム』を新たに創設し、さらに、従来の『日本簿記学会年報』には活動記録としての役割を持たせることとなりました。

一方で、学会財政の逼迫に関しては、その根本の原因が会員数の減少にあることが明らかですが、商業高校及び経理系専門学校の減少やビジネス系大学における会計関連ゼミ及び講義の受講者の減少に伴う会計関係教員の減少傾向など、会員数を増加させることはおろか、維持するのも困難な環境にあります。その根底には、「簿記」離れ、ないし「会計」離れという昨今の状況があるわけですが、それには、人工知能(AI)の発達により会計領域ないし職域が縮小するという風説、国際財務報告基準(IFRS)やそこで特に重要視されている資産負債利益観の影響により簿記の存在価値が低下するという誤解など、根拠のないイメージ先行の情報が流布していることの影響の存在を見逃すことができません。

しかし、それが誤解であること、根拠薄弱であることを社会全体に知らしめるための充分な努力を本学会がしてきたかと問われれば、不足していたのではないか、あるいは、不足とまでは言えないが、少なくとも充分であるとは言えないのではないかと感じます。この点を反省し、本学会単独ではなしえないことも他の学会または会計関連団体と協力して、これらの風説や誤解を払拭する努力をしていこうと考えております。

ところで、会員の皆様のためのサービス提供が充分であったかという点でも、検討の余地はあります。これまで学会の行事は年度内の前半に集中し、後半には、年末に『学会ニュース』とともに会員名簿が送付されること以外、学会から会員の皆様にサービスを提供することはほとんどありませんでした。また、マーケティング分野などではたった15分で聴衆の心を鷲掴みにするトピックが数多くあるのに対して、簿記・会計分野では、そのようなトピックがどれだけあるでしょうか。そこで、前者に関しては、新たな研究会合を創設するなどして、研究活動をこれまで以上に活発にし、後者に関しては、そのトピックを提示するためのプロジェクトを立ち上げるなど、今後、さまざまに取り組んでいく所存です。

新たな役員体制の下で、本学会の活動がさらに充実していくように、また、社会基盤としての会計の基底に存在する技術としての簿記の研究を通じて、本学会がいっそうの社会貢献をなしうるように、一致協力して精進してまいりますので、会員の皆様にはご協力のほど、何卒よろしくお願い申し上げます。